ジョン・ボウルビィの愛着理論
更新日:2014/07/12
お父さんのためのすくすく子育て入門。
児童心理学や発達心理学から子育てを学ぶ。
まず2歳までの子供の育て方については、ジョン・ボウルビィの「愛着理論」が参考になる。
ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)とは、20世紀のイギリスの精神科医で、母子間の絆の重要性を唱えた学者だ。
20世紀中頃まで、孤児院などの施設では、子供が病気にかかる割合(罹患率:りかんりつ)が高かった。
その原因として、貧しい食事や不潔な環境が挙げられたため、実際に食事や衛生環境を改善してみたのだが、それでも罹患率は殆ど改善しなかった。
そこでボウルビィは、第二次世界大戦後のイタリアの孤児院で戦災孤児の調査を行ない、物質的な不足より、精神的な問題の影響が大きいと考えた。
そして母と子の間に「絆のシステム」というものがあり、これが子供の健康や成長に影響するのだと唱えた。
子どもが幼児期に母親と十分な信頼関係が結べないと、成長が遅れたり、病気に弱くなったりという、様々な問題を引き起こしてしまうって話だね。
当時はまだストレスという概念も確立されておらず、精神が肉体に及ぼす影響も大きくないと思われていた時代だった。
なのでボウルビィのこの発表は大きな波紋を呼び、所属していた学会から追放されたりもしたらしい。
しかしボウルビィはさらに動物行動学など様々な学問を参考にして、人間の親と子供が、どうやって絆を結ぶのかについて調べ続けた。
一方、ボウルビィの主張に賛同する学者も現れ始め、子どもの扱い方を変更した孤児院や子ども向け施設も現れた。
その結果、成長の遅れや病気の罹患率は大きく改善したため、「2歳児までの子育てでは、母親や養育者との信頼関係が、成長や健康に、大きく影響する」ことが確認された。
人間関係は大人でも難しいけど、赤ん坊の頃からもう、その難しさに直面しているわけだな。
では子どもと親は、どのような方法で信頼関係を結ぶのかというと、「子どもの行動に、必ず反応してくれる大人」と信頼関係を結ぼうとするらしい。
2歳までに子どもは、信頼できる大人を見つける
母親を失った子どもは、病気にかかりやすくなるが、食事や環境を整えても改善されない。
なのでこれは物質的な欠乏では無く、母親との信頼関係が結べないことによる心理的な不安が原因だとボウルビィは考えた。
では、生まれてから何歳くらいまでの間に、この母子間の信頼関係が結ばれるのかというと、生後3ヶ月から2歳の期間だという。
この期間に子どもは「愛着行動」という行動を起こし、自分を養育してくれる大人を認識するのだ。
子どもがどのような行動をするのか、順を追ってみていくと、まず生まれた直後の乳児は、誰を見ても微笑むという行動を起こす。
これは「微笑み反射」と呼ばれる行動で、生後6ヶ月までの乳児の98%に見られる反応らしい。
それが生後3ヶ月後くらいから、母親や特定の大人を区別しだし、知っている大人に対してのみ微笑んで声を出し始める。
しかしその一方で、知らない大人に対しては、警戒心を示しはじめて泣き出したりする。
つまり子どもは生後3ヶ月くらいから、自分を保護してくれる大人が誰であるかを認識して、その大人と特別な関係を結ぼうとしているらしい。
好きな人には微笑んで、そうでない人には泣いて拒否するわけだ。
この特別な関係を「絆」または「愛着」と呼び、しっかりした信頼関係を結ぶことができるかどうかが、そのあとの子どもの成長や発達に大きく影響するというわけだ。
ただし乳幼児が信頼関係を結ぶのは、血のつながった母親で無くても良いという。
2~3人の特定の養育者と十分密接な接触があれば、その特定の養育者と絆・愛着が生まれ、子どもの発達や成長に十分なのだ。
子どもは、自分が何かを求めたときに、確実に応えてくれる大人を信用し、そういう大人がいることによって、健やかに育つと言うことらしい。
愛着行動の変化
- 生後3ヶ月くらいまで…誰に対しても微笑む
- 生後3ヶ月から6ヶ月…母親や養育者にのみ微笑む。
他人を怖がりだす
- 生後6ヶ月から2歳…母親や養育者を安全基地として周辺探索を始める
- 3歳以降…母親が用事などで離れても泣かずに待てるようになる。