ロバスト性 脳が成長していないのに教えても無駄
更新日:2014/07/02
お父さんのための子育て入門。
脳の発達には「ロバスト性」がある。
ロバスト性(ロバストネス)とは、一定の時間がたってからでないと、能力が身につかないような性質のことだ。
たとえば幼稚園児くらいでは、まだ時間の概念がよくわからない。
時計の読み方は、小学校2年生くらいで学ぶのだが、幼稚園くらいの歳では5分後とか10分後もわからないし、昨日や明日と言うこともよく分からない。
そこで「時計の長い針が真下に来たら」とか、「夜、一回寝て起きたら」という風に、具体的なモノや動作で教えるしか無い。
幼稚園児くらいまでの子供というのは、時間の概念が理解できないので、そういう別のモノで表現するしか無い。
幼い子供が何か楽しみがあると、何度も親に「まだ?」と尋ねているのは、そういうわけだ。
なので歌を歌ったり、テレビを見せたりして、おとなしく待たせるという工夫が必要で、時間について教えても無駄だ。
だってもっと成長してからでないと、時間が理解できないんだから。
これがつまり「ロバストネス(ロバスト性)」ということで、なのである程度の年齢まで成長しないうちに、先取り学習だとか英才教育だとか言って、形の無い抽象的なことを色々教えても身につかない。
教える方も疲れるだけで終わる羽目になるから、年相応のモノで自由に遊ばせる方がよい。
幼稚園児や小学校低学年くらいまでは、目で見て、耳で聞いて、手で触って、世界を自分の感覚で確かめる時期なので、そういう体験を自由にたくさんさせて上げることが必要だ。
時計を読めるようになるより、積み木を積んで遊ぶことの方が重要で、それによって重さや堅さ、肌触りなどの感覚や、空間認識能力が養われるのだという。
幼児は、量を長さで捉える
人間の脳は、3歳くらいまでは脳の神経細胞の数が増えていく。
3歳から7歳くらいになると、逆に神経細胞の数がジワジワ減っていく。
細胞死と言って、必要が無い細胞が、どんどん死滅して減っていくのだ。
そして7歳から10歳頃には神経細胞が成長して、他の神経細胞とつながっていく。
10歳になって、ようやく大人の脳と同じ仕組みになっていく。
なので、子供の脳が大人の脳になるまでは、いくら一生懸命教えても覚えないし、抽象的なことも理解できないことが多い。
抽象的な概念で、比較的早く理解できるようになるのは「数」の概念だが、それでも7歳くらいまでは理解できない。
たとえば5歳くらいになると、モノを組にすることができるようになるし、数を数えることも、表面上はできるようになる。
しかし7歳くらいまでは、数というのは量として捉えておらず、同じ数のモノを並べても、広く並べた方が多いと感じるようだ。
数を数えるにしても、1,2,3,4,5,と言う風に、順番通り数えることはできても、逆に数えたり、途中の数から数え始めるようなことはできない。
要するに、丸覚えしているだけで、その一部を抜き出すと言うことはできない。
また4より1個大きい数は?などという問いには答えられないから、足し算をすることもできない。
つまり「数を数える」という事一つを取っても理解の段階があって、それができるようになって、次に足し算や引き算ができるようになるわけだ。
だから9歳とか10歳になるまでは、絵を描いたりモノを作ったり、積み木を積んだりして、体験学習を中心に学び、その経験を基にして、抽象的な概念の理解に進むわけだ。
ところが実は、ここからが一番の難所で、「九歳の峠」とか「10歳の壁」と言われる山場が待っている。